top of page
LCA・環境なら株式会社Green Guardian

コラム・お役立ち情報

交付金事業のKPI、「設定して終わり」になっていませんか? ──効果検証で産業連関分析が求められる時代の、回し続ける仕組み

  • 2 日前
  • 読了時間: 8分

この記事でわかること

  • 国が交付金事業の効果検証で、KPIの達成度だけでなく「経済波及効果」の把握を求めていること

  • KPIは「設定する」ことより「達成に向けて使い続ける」ことが難しい、という現場の実態

  • 産業連関表とそれを活用するツールが、KPIのPDCA・政策検討・議会対応を一本につなぐ仕組み

  • 「経年で見る」ことで、地域経済のトレンドと将来の見通しが見えてくること

  • だからこそ、単発の調査で終わらせず「毎年回せる仕組み」として設計することが重要だということ




KPIのその先へ
KPIのその先へ


「KPIは設定した。でも、その先がわからない」

地方創生の交付金事業に取り組む自治体の担当者から、よくこんな声を聞きます。

「申請のときにKPIは設定した。でも、それをどう達成すればいいのか、毎年どう点検すればいいのか、正直よくわからないまま走っている」

KPI(重要業績評価指標)は、交付金事業の根幹です。デジタル田園都市国家構想交付金(現在は新しい地方経済・生活環境創生交付金へと再編されています)のガイドラインでも、KPIはPlan(計画)・Do(実行)・Check(点検)・Action(改善)というPDCAサイクルを回すための数値指標として位置づけられています。つまりKPIは、設定して提出すれば終わりではなく、毎年その達成度を測り、施策を見直し、また測る——という運用が前提になっているのです。

ところが現場では、この「運用」のところでつまずきます。指標の数値は集まっても、「なぜ達成できたのか/できなかったのか」「次に何をすればKPIが動くのか」が見えない。結果として、KPIが事業報告のための数字埋めになってしまう。これは多くの自治体に共通する悩みです。



国は「経済波及効果」の把握まで求めている

ここで押さえておきたい制度の動きがあります。

内閣府が公表した交付金事業の効果検証に関する調査報告書では、事業の評価項目の一つとして「経済波及効果」が明確に位置づけられています。自治体には、事業でどの業種にいくら支払ったかといった内訳の記入が求められ、その値が産業連関分析のインプットとして使われる仕組みになっています(出典:内閣府 地方創生推進事務局「デジタル田園都市国家構想交付金(旧地方創生推進交付金)事業の効果検証に関する調査報告書」令和7年3月)。

これは何を意味するか。KPIの達成度を数えるだけでなく、その事業が地域経済にどれだけのお金を生み、どれだけ波及したのかを、産業連関分析という手法で測ることが、制度の側から求められているということです。

「観光客が何人増えた」「イベントに何人来た」というアウトプットの数字は、それ自体は成果の入口にすぎません。本当に問われるのは、その先です。来訪者が落としたお金が地域にどれだけ残ったのか。事業に投じた予算が、地域内でどれだけ循環し、域外にどれだけ漏れ出たのか。ここを数字で示せて初めて、KPIは「政策を動かす指標」になります。

このあたりの「成果の入口」と「その先」の違いは、観光を例にした記事「観光の経済波及効果とは?」でもくわしく解説しています。


産業連関表が、KPIと政策と議会をつなぐ

では、どうすればKPIを「使える指標」にできるのか。鍵になるのが、地域の産業連関表です。

産業連関表は、地域内のすべての産業の間でお金がどう流れているかを一枚の表にしたものです。これがあると、次のようなことが一つの土台の上でできるようになります。

経済波及効果を測れる。 ある事業や施策が、直接の効果だけでなく、取引を通じて他の産業にどれだけ波及するかを推計できます。交付金事業の効果検証で求められる「経済波及効果」が、まさにこれです。

お金の「漏れ穴」が見える。 地域で稼いだお金が、どの産業を通じて、どれだけ域外へ流れ出ているかがわかります。たとえば「電気代として毎年これだけが地域の外に出ている」と具体的な金額で見えれば、その漏れを塞ぐ事業(地域での発電など)の検討材料になります。KPIを達成するための"次の一手"が、ここから生まれます。

議会や住民に、数字で説明できる。 これは現場の職員にとって、とても切実な価値です。「この事業には、これだけの経済波及効果があります」「この施策で、域外に流出していたこれだけのお金を地域に取り戻せます」——こう数字で示せれば、議会への説明も、住民との合意形成も、格段にやりやすくなります。実際、自治体の職員の方からは「議会対応に使える」という声を多くいただきます。

KPIの点検、達成に向けた政策の検討、そして議会への説明。バラバラに見えるこれらが、産業連関表という一つの土台の上でつながります。



「経年で見る」と、トレンドと将来が見えてくる

もう一つ大切なのが、時間軸です。

産業連関表もKPIも、ある一年だけを切り取って見ても、その数字が良いのか悪いのか判断しづらいものです。けれど、複数年のデータを並べて経年で見ると、景色が変わります。地域経済がどの方向に動いているのか、ある施策を打った後で指標がどう変化したのか、このまま行くと数年後どうなりそうか——トレンドと将来の見通しが見えてきます。

交付金事業の効果は、数年単位の時間をかけて現れることも少なくありません。だからこそ、一度きりの分析で終わらせず、データを毎年更新しながら経年で追える状態にしておくことが、KPIを本当に活かす条件になります。



だから、「単発の調査」ではなく「回し続ける仕組み」で

ここまでをまとめると、こうなります。

KPIは設定がゴールではなく、毎年回し続けることに意味がある。その運用には、経済波及効果を測り、漏れ穴を見つけ、議会に説明できる土台——産業連関表が要る。そしてそれは、経年で更新し続けてこそ価値が出る。

つまり必要なのは、一度きりの「調査の納品」ではなく、KPIのPDCAに寄り添い続ける、回し続けるための仕組みです。

私たちGreen Guardianが自治体の皆さまをご支援する際も、この考え方を大切にしています。はじめに地域の産業連関表をつくって経済の現状を見える化し、次にその情報を職員の皆さま自身が対話的に使えるツールへと展開し、その後はデータを毎年更新しながら、KPIの点検・政策の検討・議会対応に伴走していく。段階を踏みながら、自治体の中に「自分たちで地域経済を語れる力」が育っていくことを目指しています。

ある自治体では、まちの総合計画に掲げたKPIを、この地域経済の見える化ツールの中に組み込み、計画の進捗を経済データと並べて確認できるようにする取り組みが始まっています。KPIが報告書のための数字ではなく、まちの未来を考えるための生きた指標として使われ始めている——そんな手応えを感じています。



よくある質問(FAQ)

Q. 産業連関表は、一度つくればずっと使えますか?A. 経済の構造は年々変わるため、経年で更新していくことをおすすめしています。むしろ「毎年更新して変化を追える」ことこそが、KPIの点検や将来予測に活きる強みです。一度きりの調査で終わらせない設計が大切です。

Q. 小さなまちでも、産業連関表はつくれますか?A. つくれます。私たちは規模の大きくない自治体でも、経済センサスなどの公的データをもとに、そのまちに合わせた産業連関表を作成してきました。費用や範囲は「小さく始める」ことも可能です。まずは現状を見える化するところから始められます。

Q. 交付金の効果検証では、具体的に何を求められるのですか?A. 事業でどの業種にいくら支払ったか、といった支払先の内訳の記入が求められ、その値が産業連関分析のインプットとして使われます。つまり「経済波及効果を測れる状態」を、あらかじめ用意しておくことが、効果検証への備えになります。

Q. 無料のRESASがあれば十分では?A. RESASは地域の「全体像」をつかむのにとても有用なツールです。ただし、自分のまちの事業や施策が経済にどう波及するかを精密に測るには、そのまち固有の産業連関表が必要になります。両者の違いは「RESASとは?できること・できないこと」でくわしく解説しています。



まとめ

  • 国は交付金事業の効果検証で、KPIの達成度だけでなく「経済波及効果」の把握を、産業連関分析という手法で求めている

  • KPIは「設定」ではなく「達成に向けて毎年使い続ける」ことが難しく、そこでつまずく自治体が多い

  • 地域の産業連関表があれば、経済波及効果の測定・漏れ穴の発見・議会への数字での説明が、一つの土台の上でつながる

  • 経年で更新し続けることで、トレンドと将来の見通しが見え、KPIが「生きた指標」になる

  • だからこそ、単発の調査ではなく「毎年回し続ける仕組み」として設計することが重要



まずは「自分のまちの今」を数字で

「KPIは設定したが、活用できていない」「過去に産業連関表をつくったが、その後うまく使えていない」——もし心当たりがあれば、それは決して珍しいことではありません。多くの自治体が同じところでつまずいています。

大切なのは、つまずきを責めることではなく、KPIと地域経済を「回し続ける仕組み」へと組み直すことです。小さく始めることもできますし、前年度のうちに準備を整えておくと、年度の事業にスムーズに乗せられます。

まずは、あなたのまちの「お金の流れ」と「漏れ」を、体験から見てみてください。



関連記事



執筆者

株式会社Green Guardian。環境(LCA)と地域経済の「見える化」を専門とするコンサルティング会社。代表・小野雄也(博士/環境情報学)。下川町・気仙沼市・海士町ほか全国で産業連関表の作成を支援。パートナーの有限会社イーズ(枝廣淳子氏)と連携し、岩波新書『地元経済を創りなおす』で紹介された「漏れバケツ理論」をベースに、地域にお金が残る仕組みづくりを支援しています。



※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。交付金制度の詳細や最新の公募要領については、内閣府および各所管省庁の公式情報をご確認ください。

出典:内閣府 地方創生推進事務局「デジタル田園都市国家構想交付金(旧地方創生推進交付金)事業の効果検証に関する調査報告書」(令和7年3月)/同「地方創生事業実施のためのガイドライン」

 
 
 

コメント


\最新の情報をいち早く受け取れます/

登録無料・不定期配信

​メールマガジンのご案内

株式会社GreenGuardianでは、ご登録いただいた方にメールマガジンの配信サービスを行っています。
LCA関連の基礎知識、サステナビリティに関わる日本や海外の動向、基準や規制を含めた、

さまざまな情報をメールマガジン形式でお届けします。是非ご登録ください。

登録無料・不定期配信

登録が完了いたしました

AdobeStock_241865141.jpeg

LCA・地域社会活性化・社会価値の見える化なら

プロフェッショナルな担当が御社のお悩みを解決します

お客様の課題解決をサポートします。
お気軽にご相談ください。

\最新の情報をいち早く受け取れます/

登録無料・不定期配信

bottom of page