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自治体の総合計画から読み解く「次の10年」のまちづくり

  • 3 日前
  • 読了時間: 9分

こんにちは!

株式会社Green Guardianの小野雄也です。

今回は「自治体の総合計画」について、データを読み解きながらお伝えしていこうと思い売ます。

ぜひお付き合いください。



目次



1.なぜ今、「総合計画」を読み直す必要があるのか

2024年から2026年にかけて、全国の自治体で総合計画の改定ラッシュが起きています。

白馬村は2025年10月に第6次総合計画の基本構想案を公表し、神戸市は2025年12月から次期基本計画(第6次神戸市基本計画)のパブリックコメントを実施しました。

富士市・富山市もそれぞれ次期計画の策定作業を進めています。


偶然のタイミングではありません。

背景には、2025年6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」があります。

この構想は「今後10年間を対象として策定し、中間年度の5年後に必要な見直しを行う」と明記されており、地方創生2.0基本構想は、近年の総合計画改定にも影響を与える国の重要な長期方針の一つとなっています。


そして地方創生2.0基本構想が突きつける現実は、これまでの「人口を増やす」計画とは一線を画すものでした。日本の総人口は2024年10月時点で約1億2,400万人。

2014年からの10年間で約340万人、生産年齢人口は約410万人減少しています。

国はこの数字を前提に、「人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる」適応策への転換を打ち出しました。


つまり「次の10年」の総合計画は、単なる形式的な更新作業ではありません。

人口減少を前提としたうえで、まちがどう豊かであり続けるかを問う設計図へと、その性格を変えつつあるのです。


本稿では、全国15の自治体の総合計画を実際に読み込み、そこに現れている共通のパターンと、一歩先を行く自治体の違いを整理します。地域経済循環・産業連関分析を専門とする立場から見えてきたのは、「総合計画の書きぶり」そのものが、そのまちの経済的自立度を映す鏡になっているという事実でした。



  2. 「10年構想+5年計画」という標準フォーマットの定着

今回読み込んだ15自治体の多くが、次のような三層構造を採っていました。


● 基本構想:おおむね10年間の長期ビジョン

● 基本計画:前期5年・後期5年に分けた具体的な施策の束

● 実施計画:3年程度でローリング(毎年見直し)される予算・事業レベルの計画


浜松市は基本構想(浜松市未来ビジョン)を30年先、2045年まで見据えたうえで、2025年度からの基本計画を10年スパンで設計するという、長短二層のバックキャスト構造を採用しています。

ニセコ町も第6次総合計画で2024年から2035年までの12年間を見通しました。

この「長期ビジョンから逆算する」設計思想——バックキャスティング——が、多くの計画に共通していたことは注目に値します。

かつての総合計画が「今の延長線上に何ができるか」を積み上げる発想だったとすれば、次の10年の計画は「ありたい未来から逆算して、今何をすべきか」を問う構成に転換しているのです。


白馬村の第6次総合計画・総合戦略の基本構想(案)には、次の一文がありました。

「この先の10年間を見据え、量よりも質を重視し、安定的でゆるやかな成長」

人口や交流人口の「量」を追い求めた時代から、住民の暮らしの「質」をどう測り、高めていくかへ——これは白馬村に限らず、多くの自治体の計画に通底するトーンでした。



  3.KPIは「設定して終わり」から「回し続ける仕組み」へ

総合計画の中身を読み込んでいて特に印象的だったのは、KPI(重要業績評価指標)の設計が精緻化していることです。


岡山県奈義町の「まちづくり総合計画(後期計画)」では、4つの基本目標それぞれに具体的な数値目標が設定されています。

合計特殊出生率2.30の維持、UIJターン350人/年、観光消費額2億7,500万円/年、町財政の将来負担率0%——いずれも「達成できたかどうか」を誰の目にも明確な形で検証できる指標です。

加えて、無作為抽出による町民満足度調査を組み合わせ、数字と住民の実感の両方でPDCAを回す仕組みを整えています。


これは偶然ではなく、国の制度側からの強い後押しがあります。

内閣府地方創生推進事務局が2025年3月にまとめた「デジタル田園都市国家構想交付金事業の効果検証に関する調査報告書」では、交付金事業のKPI分類が「総合的なアウトカム」中心から、近年は「アウトプット」や「交付金事業固有のアウトカム」へと移行してきた傾向が示されています。

ガイドラインが定める21項目の「取り組むべきこと」のうち15項目で、実施した事業のほうがKPI達成割合が高かったという実証結果も明らかにされました。


つまり、KPIを「一度設定して終わり」にするのではなく、「毎年、達成に向けて回し続ける」仕組みそのものが、国の効果検証によっても裏付けられているわけです。

総合計画のKPIを地域経済の見える化ツールに組み込み、計画の進捗を経済データと並べて確認するという発想は、今後さらに広がっていくと考えられます。



  4.産業連関分析を計画の土台に据えた3つの先行事例

15自治体を読み込むなかで、明確に一歩先を行っていると感じたのが、産業連関表や地域経済循環分析を計画の基盤に組み込んでいる自治体でした。

ここでは代表的な3つを紹介します。


➀真庭市(岡山県)——独自の産業連関表を「経済産業ビジョン」の基礎に

真庭市の「第3次真庭市総合計画」は、基本目標に「多彩な真庭の豊かな生活」を掲げ、多彩性・循環性・環境性・持続性・自給性という5つの視点でまちづくりを描いています。

特筆すべきは、前身の第2次総合計画に基づき策定された経済産業部門の主要計画「真庭市経済産業ビジョン」(計画期間2022〜2026年度)が、市独自に作成した11部門構成の産業連関表とバイオマス産業の経済循環構造分析を基礎データとして明記している点です。

この産業連関表に基づく分析手法は、現行の第3次総合計画にも引き継がれています。

人口減少対策を最重点の横断プロジェクトに位置づけ、2040年に人口3.2万人を維持するという目標も、この経済構造分析の裏付けを持って設定されています。


➁富山市(富山県)——「地域経済循環分析用データ」で都市の生産性を語る

富山市の第3期総合戦略は、環境省の地域経済循環分析用データを用いて、2010年から2020年にかけての労働生産性(付加価値額÷地域内従業者数)の推移と全国順位を明示しています。

コンパクトシティ政策で知られる富山市らしく、「都市の生産性を高める」ことを基本理念に据え、その根拠として国が公開する地域経済循環データを活用している点は、環境省の分析ツールが実務でどう使われうるかの好例といえます。


➂海士町(島根県)——地域内循環と「外貨」流出への問題意識

離島の海士町は、第3期総合戦略「地域経営人口プラン」において、「住みよいまち」「魅力あるひと」「活力あるしごと」の好循環を回す地域経営の発想を打ち出しています。

過去の地域再生計画では、地域内循環率の低さと外貨(島外への資金流出)への問題意識が明確に示されており、まさに「漏れバケツ」的な発想が政策の根底に流れている自治体のひとつです。



  5.「先行組」と「多数派」を分けるもの

一方で、今回読み込んだ15自治体のうち、産業連関分析や地域経済循環の視点を明示的に総合計画に組み込んでいたのは、真庭市・富山市・海士町など一部にとどまりました。

新居浜市、富士市、伊那市をはじめとする多くの自治体は、SDGs、デジタル変革、脱炭素、関係人口の拡大といったキーワードを前面に掲げる一方、「域内でどれだけのお金が循環し、どこで域外に漏れているか」という経済構造そのものへの言及は限定的でした。


これは、どちらが優れているという単純な話ではありません。

総合計画という性質上、幅広い分野を網羅する必要があり、経済分析はその一部にすぎないからです。

しかし、次の10年を人口減少という制約のなかで設計するのであれば、「まちのお金がどう流れているか」を定量的に把握することは、KPIの妥当性そのものを左右する土台になります。



  6.「次の10年」を計画から運用へつなぐために

ここまで見てきた15自治体の総合計画に共通していたのは、以下の3点に集約できます。


  1. バックキャストで描かれた10年〜12年の長期ビジョンと、5年ごとの基本計画による段階的な実行設計


  2. 数値目標を「設定して終わり」にせず、毎年検証・更新する仕組み(PDCA)の標準装備

  3. 人口減少を前提としたうえで、量から質へと軸足を移す政策の言語化


そのうえで、今後の総合計画がさらに一段深化するとすれば、その方向性は明確です。RESASや産業連関表による現状分析(診断)、EBPMの考え方に基づくロジックモデルでの目標設計、そして交付金効果検証の知見を活かした検証・改善のサイクル——この「診断・設計・検証」の三層を、地域経済のデータで一貫してつなぐことです。


真庭市や富山市、海士町のように、まちのお金の流れそのものを可視化し、それを総合計画のKPIと結びつける自治体は、まだ全体の一部にすぎません。

しかし、地方創生2.0基本構想が「人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる」適応策への転換を掲げた以上、この視点は今後、総合計画の標準的な考え方の一つになっていく可能性があります。

自分たちのまちの総合計画を開いたとき、そこに掲げられたKPIの裏に、どれだけ確かな経済データの裏付けがあるか——「次の10年」を考えるうえで、まず問い直すべきはそこにあるのかもしれません。


産業連関表の活用方法や地域経済循環分析、経済波及効果分析などについてお困りの際は、株式会社GreenGuardianまでお気軽にご相談ください。

自治体の目的や課題に応じた分析・活用方法をご提案いたします。


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2.EBPMとは? 自治体に「今なぜ必要か」をわかりやすく解説


3.RESASとは? できること・できないことと「次の一手」をやさしく解説


4.経済波及効果とは? 計算方法と「数字の読み方」をわかりやすく解説


5.産業連関表はどこで手に入る?──全国・都道府県・市区町村の「公開一覧」と探し方ガイド


参考文献

1.地方創生2.0基本構想(令和7年6月13日閣議決定)

2.デジタル田園都市国家構想交付金事業の効果検証に関する調査報告書(令和7年3月)|内閣府地方創生推進事務局

3.環境省 地域経済循環分析の手引書

4.真庭市経済産業ビジョン(真庭市産業連関表・経済循環構造分析)

5.第3次真庭市総合計画

6.富山市 第3期総合戦略(地域経済循環分析用データ)

7.富山市総合計画

8.第3期 海士町総合戦略〜地域経営人口プラン〜

9.白馬村第6次総合計画・総合戦略(基本構想案)

10.奈義町まちづくり総合計画(後期計画)

11.浜松市総合計画 第2期基本計画

12.RESAS(地域経済分析システム)

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